下垂体疾患
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下垂体機能低下症
(1)病気の解説
脳の中心に垂れ下がっているように見える下垂体は、径1cmの小さな内分泌器官です。その下垂体は、前葉と後葉に分かれ、前者から主に6つの身体にとってとても重要なホルモンが分泌されています。副腎に作用してコルチゾール(ヒトの最も重要なステロイドホルモン)の分泌を促す副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺に作用して甲状腺ホルモンの分泌を促す甲状腺刺激ホルモン(TSH)、性腺に作用して性ホルモンの分泌を促したり、卵子や精子の成熟を促す黄体刺激ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)、成長期の背の伸長や成人期の筋肉量の維持・内臓脂肪の減少などに作用する成長ホルモン、女性の授乳に必要なプロラクチンです。下垂体後葉からは抗利尿ホルモンが分泌されますが別項で説明します。下垂体やその近傍に腫瘍ができたり炎症が発生して、下垂体前葉のホルモンが減少した状態を下垂体機能低下症と言います。最近では、抗がん剤の一部に副作用として下垂体機能低下症が発生する事があります。下垂体のホルモンが少なくなると、それぞれのホルモンが低下した事による症状が見られます。
(2)症状
1.ACTHの低下
ACTHが低下すると引き続いて、副腎からのコルチゾール分泌が低下します。コルチゾールは体のストレスを和らげるために、最も重要なものです。コルチゾールが低下すると、倦怠感、食欲低下、体重減少、腹痛、微熱、血圧低下、低血糖、低ナトリウム血症等が見られ、重症になると意識低下を来します。
ACTHが低下すると引き続いて、副腎からのコルチゾール分泌が低下します。コルチゾールは体のストレスを和らげるために、最も重要なものです。コルチゾールが低下すると、倦怠感、食欲低下、体重減少、腹痛、微熱、血圧低下、低血糖、低ナトリウム血症等が見られ、重症になると意識低下を来します。
2.TSHの低下
TSHが低下すると引き続いて、甲状腺からの甲状腺ホルモン分泌が低下します。倦怠感、活力の低下、肩こり、こむら返り、皮膚乾燥、高コレステロール血症、肝臓の検査値(特にCK)上昇等が見られます。
TSHが低下すると引き続いて、甲状腺からの甲状腺ホルモン分泌が低下します。倦怠感、活力の低下、肩こり、こむら返り、皮膚乾燥、高コレステロール血症、肝臓の検査値(特にCK)上昇等が見られます。
3.LHとFSHの低下
この2つのホルモンは、同じ細胞で作られるため、ほとんど同時に障害を受けます。これらが低下すると引き続いて、性腺から分泌される男性ホルモン(テストステロン)、女性ホルモン(エストラジオール、プロゲステロン)が低下します。男女を問わず陰毛恥毛の減少が見られます。閉経前女性では無月経となります。男性では、インポテンツや筋力低下を認めます。
この2つのホルモンは、同じ細胞で作られるため、ほとんど同時に障害を受けます。これらが低下すると引き続いて、性腺から分泌される男性ホルモン(テストステロン)、女性ホルモン(エストラジオール、プロゲステロン)が低下します。男女を問わず陰毛恥毛の減少が見られます。閉経前女性では無月経となります。男性では、インポテンツや筋力低下を認めます。
4.GHの低下
小児期にGHが低下すると、低身長となります。成人となってから発症した場合は、活力の低下、倦怠感、内臓脂肪の増加、筋力の低下等が見られます。
小児期にGHが低下すると、低身長となります。成人となってから発症した場合は、活力の低下、倦怠感、内臓脂肪の増加、筋力の低下等が見られます。
5.プロラクチン
このホルモンは、下垂体の壊死を生じなければ、低下する事は無く、むしろその特徴として増加する患者が多いです。プロラクチンが増加すると、閉経前女性では無月経になりやすくなります。時に、妊娠と無関係に乳汁の分泌を認める事があります。
このホルモンは、下垂体の壊死を生じなければ、低下する事は無く、むしろその特徴として増加する患者が多いです。プロラクチンが増加すると、閉経前女性では無月経になりやすくなります。時に、妊娠と無関係に乳汁の分泌を認める事があります。
(3)診断のしかた
主に、血液検査、尿検査、頭部のMRIを用いて診断を進めます。特に、負荷試験と言って各ホルモンを増やすようなお薬を注射して、健康の方と同じように血液中のホルモンが増えるかを検査します。
(4)治療のしかた
下垂体ホルモンが低下してしまった結果、体で働くべきホルモンを補う治療を行います。ACTH低下症の場合はコルチゾールを、TSH低下症の場合は甲状腺ホルモンを内服します。これらは、生命を維持するために必ず行わなければならない治療となります。女性ホルモンや男性ホルモンについては、これから妊娠を希望されるか否かによって、内服治療や注射の治療を選択していきます。成長ホルモンは、生活の質を考慮しつつ、必要な患者様には治療をお勧めします。毎晩寝る前に皮下注射を自身で行います。とても簡単な注射薬ですので、どなたでも行う事ができます。プロラクチンの低下は治療必要ありませんが、増加して無月経となった場合は、内服薬(カベルゴリン)で治療を行います。
(5)その他
原因と重症度によっては、指定難病として公費助成の対象になる場合があります。主治医に相談しましょう。
先端巨大症(アクロメガリー)
(1)病気の解説
脳下垂体のホルモンの内、骨の成長や筋肉・脂肪の量を調節したり、体調を整えるのにとても大切な働きをするのが、成長ホルモン(GH)です。極稀ですが、GHを過剰につくる腫瘍(ほとんどが良性の腺腫)が脳下垂体にできることがあります。GHが増えすぎると、特徴的な症状や高血圧・糖尿病などを引き起こし、生活の質や寿命にかかわる様になってしまいます。この病気を先端巨大症といいます。骨が硬くなる前の成長期にこの病気になると高身長となり、下垂体性巨人症とも言われます。
(2)症状
特徴的な症状としては、以下のものがあります。1)頬骨や下顎が大きくなりせり出てくる、2)手足が太くなり指輪がはまらなくなったり靴のサイズが大きくなったりする、3)舌の容積が大きくなって口が閉じにくくなったりしゃべりにくくなるようになります。下垂体の腫瘍が大きくなりすぎると、その直上にある視神経が圧迫され、視野の一部が見えにくくなります。(外側が見えにくくなる事が多いです)約半数の患者さんに大腸ポリープを認め、便秘症になりやすいです。骨の変形が進み関節痛に悩んでいる方も多いです。高血圧症や高血糖(糖尿病)にもなりやすいため、主治医の先生に相談するの事は重要です。日頃お目にかかっていると、顔の変化に気付きにくく、ベテランの医師でも分からない事があります。
(3)診断のしかた
血液中のGH濃度と、それに関連するインスリン様成長因子1(IGF-1)(ソマトメジンCとも言います)濃度も高値になります。健康な人は、ブドウ糖液を飲むと2時間以内に血液中のGH濃度が低下して1ng/mL未満になりますが、先端巨大症の患者では低下せず、逆に増加する場合もあります。血液検査を中心にGHが高値である事を確認しながら、MRIを使って下垂体に腫瘍があることを確認します。
(4)治療のしかた
まず、第一に下垂体の手術に慣れている脳神経外科医による手術を推奨します。約70%の方は、この手術で血液中のGH濃度は正常になります。現在では、鼻腔から手術を行う事がほとんどであり、その場合は、頭髪を剃ったりはせず、頭部に手術根が残る事はありません。当院では、熟達した脳外科医と連携をとって、手術を依頼しています。
もし、手術で血液中のGHやIGF-1濃度が正常に戻らなかった場合は、お薬による治療を行います。月に1度程度の注射(筋肉あるいは深部皮下)をするものや自宅で自己注射をする方法があります。これらの、高度医療は当院で行っています。
治療の効果が現れると、手足が指が細くなったり、血圧が低下したり、血液検査で血糖値などが改善します。ただ、残念ながら骨の変形は改善しません。
もし、手術で血液中のGHやIGF-1濃度が正常に戻らなかった場合は、お薬による治療を行います。月に1度程度の注射(筋肉あるいは深部皮下)をするものや自宅で自己注射をする方法があります。これらの、高度医療は当院で行っています。
治療の効果が現れると、手足が指が細くなったり、血圧が低下したり、血液検査で血糖値などが改善します。ただ、残念ながら骨の変形は改善しません。
(5)その他
原因と重症度によっては、指定難病として公費助成の対象になる場合があります。主治医に相談しましょう。